ソウルのビスポークテーラー B&Tailor/ビーアンドテーラーにお願いしていた、スポーツコート(ジャケット)が納品されました。注文したのは、今年の7月頃だったと記憶していますが、仮縫いをソウルにて、中縫いを東京にて、という具合に進めたので、思いのほか早く到着しました。
ちなみに、通常の日本でのオーダーですと、年3回の来日のタイミングで仮縫いと中縫い(初めての方は採寸も)を行うので、約1年後の仕上がりとなります。ただ、早く手に入れたいという方のために、私がお客様をソウルにお連れして、現地で仮縫い+ソウルのグルメをご案内する企画もございますので、お問合せください。
さて。今回仕上がってまいりましたのは、下記の写真のジャケットです。B&Tailorからのビスポークとしては私にとって3着目で、1着目はグリーンのソラーロ生地のシングルピークドラペル 2pcs、2着目はブラウンとグレーのグレンチェックでダブルブレステッド、そして3着目がこのなんとも言えないジャケットというわけです。
生地は、私が個人的に所有しているヴィンテージ生地コレクションから、SCABAL/スキャバルのヴィンテージツイードを選びました。ウールとカシミアで、ツイードの里、スコットランドで織られたものです。年代は不明ですが、風合いやデザイン、なにより数えるのが億劫になるほどの糸の色数を見るに、ヴィンテージであることは間違いないでしょう。
ジャケットのスタイル自体は、B&Tailorのハウススタイルほぼそのままで、ノーベントとチケットポケット以外は仕様もフィット感もリクエストしていません。仮縫いでの微調整もほぼお任せです。というのも、ビスポークはたったの3着目ですが、彼らのメイド・トゥ・メジャーラインで、すでに10着以上仕立てているので、フィット感やサイズ感の共有は問題ないのです。
もちろん、ビスポークもMTMも、はじめの1着~4着はかなりの話し合いを行いました。毎回、仕上がったものを前に改善点の話し合いを重ねていき、数着目にしてやっと納得の着心地にたどり着く、というのが、ビスポークオーダーというものだろうと思いますし、「失敗に関して話し合って、次はもっと良いものにしてくださいよ」と言える関係性を作れるか、がとても大切です。もしあなたが1着目から完璧なものを求めるのであれば、オーダーには向いていないかもしれません。
上の写真は、ソウルのアトリエでの初縫いの際の写真です。心苦しくも、お客様に撮影いただきました。右側のブルーの紳士が創業者であり、マスターテーラーのPark氏。左のブルーグレーの紳士が、Park氏の長男のChad氏です。Chadは、東京のトランクショーには帯同しないので、会える機会はソウルに行った時のみですが、いつでも明るく迎えてくれる兄貴肌の友人です。写ってはいませんが、Park氏の次男のChang氏もこの場におり、父と兄によるフィッティングの指示を丁寧に指示書に記載していました。
フィッティングを受けていて面白いのは、マスターのフィッティングと、Chadのフィッティング、そして、Changのフィッティング、それぞれに特徴があるということです。そのため、マスターやChangがフィッティングを行ったお客さんの仕上がり品と、Chadが行ったお客さんのそれでは、どこか表情が違うのです。
マスターとChangのフィッティングは、ハウススタイルに則ったクラシックな雰囲気ですが、少しスリムでモダンな印象を受けます。一方、Chadのフィッティングは、よりゆったりとしていて、クラシックな空気感よりも「昭和的」な匂いのする仕上がりになっているのです。
今回、私は初縫いをマスターとChad、中縫いをマスターとChangというコンビで行ってもらいました。初縫いではChadメインのフィッティングによって、ゆったりとした「Chadスタイル」に調整されましたが、中縫いでは、それに対してマスターとChangが少しモダンなサイズ感を加えてくれました。結果として、今までとは違う風合いのB&Tailorが仕上がってきて、非常に満足しています。ビスポークの楽しみである、「一着ごとに良くなっていく」ということを体感できた瞬間です。十数着も仕立てていて、飽きるほど彼らのスーツを見ている私のような可笑しな人でないと気がつかないレベルの話なのだと思いますが、どこか良いのです。
全身の写真はまだないのですが、こういったスタイルでこのジャケットを楽しんでいます。ジャケットは、今まさにご紹介しているB&Tailorのビスポーク、シャツはあいにくあまり写っていませんが、香港のAscot Chang/アスコット・チャンのビスポーク(生地はThomas&Masonのアスコットチャンエクスクルーシブ生地)、ネクタイは、シンガポールのVanda Fine Clothing/ヴァンダ・ファイン・クロージングのメイド・トゥ・メジャーオーダー、トラウザーズは、日本ブランドのエミネントが海外向けに販売している「Echizenya」というブランドのもので、シンガポールの友人でパートナーの「Last & Lapel/ラスト&ラペル」というショップで買ったものです。最後に靴は、パンツと同じネイビーのベルジャンローファーで、クロコとカーフのコンビネーション です。
今、B&Tailorには、VBCの6Ply ネイビー生地で、1930年代風のシングルの3つボタン段返り ピークドラペル仕様のスリーピースをオーダー中です。また、香港のW.W.Chanには、Hardy Minnisの3Ply ダークグレー生地で、これまた30年代風で、段返りではない3つボタン仕様のピークドラペル・スリーピースをオーダーしています。今、私の中には、シングルのピークドラペルの趣味が到来しています。
Text, Translate and Photos:Moto Kwok, Sally Kwok
Moto Kwok-fan
Moto was born and raised in Japan and has lived and worked in Shanghai and Hong Kong.
After he graduated from university, Moto started his career as a real estate and investment agent and digital-marketing. He worked for this industries for about six years and afterwards he started own business as marketing and some fashion brand agent.
In 2018, he joined SARTO GINZA as director and now he in charge of the marketing, promotion and sales department.
Menswear enthusiast and movie props, LEGO block, old Kenner/Hasbro Action figures “Huge Collector”
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