Vol.2 香港テーラー”W.W.Chan & Sons/WWチャン”

 Vol.1で、「レッドギャングテーラー」のお話をしましたが、「上海系」、「広東系」、「インド系」、「ポルトガル系」など、より細分化して区別する人もいます。 
 ざっくりとご説明すると、上海系は、Vol.1でご説明した通り、WWチャンのようなテーラーのことで、上海で学び、香港へ移ってきたテーラーを指します。仮縫いを2回行うなど時間をかけて仕立てる香港テーラーの多くが上海系と呼ばれています。下に写真を載せましたが、これは上海にあった学校「カッティング&テーラリングカレッジ」の卒業証書で、WWチャンの創業者 チャン・ウィンワー氏のものです。写真は、中国・北京のセレクトショップでWWチャンのトランクショーも開催しているBrio Beijingからお借りました、謝謝 George!。
 余談ですが、上海系テーラーはその文字の通り上海からやってきた上海人の職人も多くいるため、工房内で広東語ではなく上海語を話す方も多くいます。以前、とある香港テーラーの工房へお邪魔した際、上海語が飛び交っていて、非常に驚きました。私は上海の大学で学んでいましたので、多少上海語が分かりますが、まさか香港で上海語を聞くとは思っていなかったのでとても驚きました。ただ、香港テーラーの起源は杭州/寧波や上海であるということを再認識する出来事でもありました。

 話を戻して、「広東系」、「インド系」、「ポルトガル系」ですが、これらは細かく話をすれば長くなりますが、これもまたざっくり説明をすると「スピード(が速い)」というのが特徴です。初回の仮縫いを採寸した翌日に行うといったのはザラというか、これでも遅いほうで、「仮縫いするから数時間後に戻ってきてね!」というのが普通であったりします。もちろん、完成までも早く数日や数週間で完成し、数日間の旅行や出張のうちに受け取りまでできてしまうほどのスピード感です。もっと言えば、「24時間で仕立てる」といったテーラーまであります。
 多くの日本人にとっての香港テーラーのイメージの多くは、実は上記の「広東・インド・ポルトガル」系テーラーであることが多いです。2、30年前に時計を戻して、当時の香港を思い出してみると、カメラと札束を持った日本人が押し寄せて「爆買い」をしていた姿が鮮明に思い浮かぶかと思います。
 この時、ブランドの爆買いに合わせて、「香港でオーダースーツ」というのも一つのトレンドでした。そして、オーダースーツを求める日本人の多くが訪れていたのが、今まさにご説明した安くて速いテーラーです。もちろん、WWチャンなど正統派のテーラーでじっくりと時間をかけて良いものを仕立てていた人もいますが、多くは「安さと速さ」を取り、24時間仕立てテーラーでスーツを何着も仕立てていました。

 サルトでも香港スーツのお直しを多く受けてきましたが、その多くはやはり24時間仕立てなどのテーラーのものでした。ミシンをフル活用したとしても多くの時間を必要とするスーツ仕立てにおいて、ここまで短時間で完成するということは、なにかを犠牲にしているということですので、「これは。。。」といった出来のものがあるのも事実です。ただ、同時に意外と完成度が高いものがあり、驚くことも多いです。なぜここまで安く、そして短時間でできるのかという部分は、とてもディープな裏話になりますので、ここでは遠慮しましょう。

Text and Photos:Moto Kwok, Sally Kwok

WWチャン創業者 チャン・ウィンワー氏の上海カッティング&テーラリングカレッジの卒業証書, pic by BRIO
motokwok

Moto Kwok-fan

Moto was born and raised in Japan and has lived and worked in Shanghai and Hong Kong.
After he graduated from university, Moto started his career as a real estate and investment agent and digital-marketing. He worked for this industries for about six years and afterwards he started own business as marketing and some fashion brand agent.
In 2018, he joined SARTO GINZA as director and now he in charge of the marketing, promotion and sales department.

Menswear enthusiast and movie props, LEGO block, old Kenner/Hasbro Action figures “Huge Collector”