引き続き、アスコット・チャンの工房をご案内いたします。
こちらの写真は、生地用の洗濯乾燥機。シャツを仕立てる前の生地に、一度洗いをかけることで、仕立てた後の洗濯での縮みを防ぐ意味合いがあります。
また、多くのテーラーがそうしているように、仕立てる段階で、生地の縮みを想定した寸法で裁断し、縫製をしています。こうした工程により、洗っても着心地の変わらないシャツを提供しています。
こちらは、カッティングと縫製チームです。縫製チームは、女性を主体としているように見えました(たまたまかもしれません)。縫製は、襟、袖、身頃、袖と身頃の縫い合わせなど工程ごとに別れており、
また、カッティングチームは、パターン/型紙製作チームが、デジタル(CAD)で製作した型紙を元に、生地の裁断を手際よく行っていきます。アスコットチャンのシャツの特徴して、「正確な柄合わせ/パターンマッチング」がありますが、その秘密は、熟練で丁寧なカッティングチームの技術によるものです。下の写真のように、白無地生地に対しても、一つひとつに丁寧に向き合い、職人同士で相談しながら、ハサミを入れていきます。
次回は、アスコット・チャンが誇る、膨大な生地アーカイブの保管庫をご紹介いたします。
最後に、私個人がこのブランドを大好きな理由をお話させていただきます。それは、高い品質だから好きという単純な理由もありますが、一番の理由は「職人を大切にしている」からです。アスコット・チャンは、給与や待遇という現実的で具体的な部分も含めて、職人のことを考え、非常に大切にしているのです。
なぜ、わざわざ「給与や待遇」という言葉を出したかと言えば、「職人技を守りたい」という謳い文句の企業の中には、それが言葉だけである場合もあるためです。そして、アスコット・チャンはそうではない、ということを明確に言いたかったためです。
ちなみに、アジアの中華圏、特に華僑の中には、古くから生きる術として、「三把刀(3つの刃物)」という言葉があり、これは「料理人」「理容師」「仕立て職人」という刃物を使う職業3つを意味する言葉で、どこに行ってもこの仕事ができれば生きていけるという、なんとも中華圏らしい教えです。
実際に、国共内戦や様々な理由で、中国大陸からアメリカやヨーロッパ、オセアニアなど海外へ移民をした人たちは、上記の3つの職業の内のどれかを現地で開業し、そこから生活をスタートさせた人も多く存在します。
香港で仕立て職人という地位がしっかりと存在するのは、こうした教えを通して、職人に対する理解や尊敬というものが古くから存在するからとも言えるのです。
Text and Photos:Moto Kwok, Sally Kwok
Moto Kwok-fan
Moto was born and raised in Japan and has lived and worked in Shanghai and Hong Kong.
After he graduated from university, Moto started his career as a real estate and investment agent and digital-marketing. He worked for this industries for about six years and afterwards he started own business as marketing and some fashion brand agent.
In 2018, he joined SARTO GINZA as director and now he in charge of the marketing, promotion and sales department.
Menswear enthusiast and movie props, LEGO block, old Kenner/Hasbro Action figures “Huge Collector”
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