ネクタイの長さ調整のオススメ

多くのお客様から、こんなお声を頂戴することが多くございます。
「女性ものも直せるんですか?」、「デニムも持ってきていいんですか?」。
もちろん、大丈夫でございます。

スーツのお直しが最も多い我々でございますが、決して、スーツ専門、男性専門ではございません。
レディースのジャケットやワンピース、ドレスはもちろん、デニム、レザージャケット、ダウン、作業着、スポーツウェア、学生服、柔道着(!)まで、どんなものでもお受けしております。

今回も、そんな「こんなこともやっていますよ」というお直しを紹介させていただきます。

お直し前 -アイテム-

今回はネクタイになります。
ネクタイは、クールビズの一般化でどんどんと馴染みの薄いものになってはいますが、スーツスタイルを引き締めるにはなくてはならないアイテムです。
ネクタイは、顔のすぐ下で、コーディネイトの中心に来るアイテムなので、色や柄には気を使っている方は多いと思います。ただ、多くの方が忘れているのが「長さ」の問題です。

下記の写真を御覧ください。
一般的な長さである146cmのネクタイを少し小柄な弊社スタッフが締めた様子です。色柄は洒落ていますが、とくかく長く見えます。首の細さや身長によって、一般的な長さのネクタイでもこのような見え方になってしまうのです。
ネクタイの結び方を工夫して、長さを調整する方法はないことはないですが、以上に太い結び目になってしまい、見栄えがどうも落ち着きません。そのため、今回はネクタイをバランスよくカットして長さを調整するお直しを行いました。

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お直し後 -アイテム-

彼の身長に合う最適な長さを算出し、ネクタイの大剣と小剣のバランスを見ながら、長さを調整いたしました。
洋服と同様に、ネクタイにもその人にあったサイズというものがある、というのはなかなかマニアックに思えるかもしれませんが、こうした部分にも気を使うことで、人からの見え方が変わっていきます。

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一般的なサイズダウンだけではなく、リメイクも、ぜひご検討ください。

Vol.2 香港シャツメーカー “Ascot Chang/アスコット・チャン”

アスコット・チャンの香港工房とオフィスは、香港の九龍半島側、黄埔/Whampoaという工業エリアにあります。
お店で展開をしている既成品などは、香港のすぐ隣の都市「深セン」の工場で作られていますが、ビスポークやMTM(メイド・トゥ・メジャー)などの主要な商品は、この香港工房で作られています。

工房の内部は広く開けており、大きく分けて、パターンメイキング、カッティング、縫製、検品といったチームに分かれて作業をしています。もちろん、縫製チームもその中でさらに細分化され、袖を縫製する職人、襟を縫製する職人といったように分業制が取られています。また、シャツへのネーム刺繍を担当する職人チームもおり、一針一針丁寧に手縫いで刺繍をしていました。手縫いでの刺繍は、時間がかかる工程であるが故に、ジャスティンは「ここが我々の”ボトルネック”ですね」と冗談交じりに言っていました。

こちらの写真は、アスコットチャンと言えばコレと言っても過言ではないほど、メディアによく登場する「パターンルーム/型紙保管室」です。ビスポークシャツを仕立てた顧客の型紙はここに全て保管をされます。
保管期間は10年間で、もし最後のオーダーから10年間オーダーがなければパターン/型紙は破棄されますが、10年間の中で一度でも再度オーダーがあれば更新されていきます。私のパターンもこの中に保管をされています。

最後に、余談になりますが、香港テーラーの中には「パターンを残さない」というやり方を取る職人も存在します。通常、採寸数値を元に、模造紙のような大きな紙にパターンを描き、それをカットした後、そのカットされたパターンを生地の上に置き、チョークでなぞることで生地に写し取ります。そして、その後、裁断です。
しかし、一部の香港テーラーは、採寸数値を元に生地に直接パターンを描き、その後すぐに裁断をするというやり方を取ります。いわゆる「直裁ち」という手法で、ナポリなどのイタリアンテーラーもこういった手法を取っているところが多く存在します。
ナポリの事情はわかりませんが、香港の場合、「家が狭すぎて、保管する場所がない」がために、パターンを残さないようになった、という香港の住宅事情が理由としてあります(もちろん、これが全ての理由ではありませんが)。

パターンがないがゆえに、「毎回仕上がりや着心地が違う」といったことが起きてくるのも香港テーラーの特徴ではありますが、それはイタリアンテーラーで感じるのと同じように「味がある」ということで、勘弁いただければと思います。

もちろん、全ての香港テーラーがそうではありませんので、誤解のないようにしておきたいと思いますが、アスコットチャンと同世代のW.W.Chan and Sonsなどの老舗テーラーは、パターンを作成・保管しており、毎回同じ質のスーツを提供しています。彼らのような老舗テーラーは、世界中に顧客を持っており、「ネイビー生地でもう一着お願い。2ヶ月後に香港行くからその時に受け取るよ」といったオーダーを電話やメールで受けることが非常に多いため、パターンを残していないと、安定したスーツを提供できないためです。

Text and Photos:Moto Kwok, Sally Kwok

motokwok

Moto Kwok-fan

Moto was born and raised in Japan and has lived and worked in Shanghai and Hong Kong.
After he graduated from university, Moto started his career as a real estate and investment agent and digital-marketing. He worked for this industries for about six years and afterwards he started own business as marketing and some fashion brand agent.
In 2018, he joined SARTO GINZA as director and now he in charge of the marketing, promotion and sales department.

Menswear enthusiast and movie props, LEGO block, old Kenner/Hasbro Action figures “Huge Collector”